
少ない人数で、どこまで“おもてなし”ができるか。
チェックイン対応に追われる夕方のロビー。
内線は鳴り止まず、外国語での問い合わせに戸惑うスタッフの姿——
そんな現場のリアルを見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか。
今、ホテル業界は「サービス品質の維持・向上」と「人手不足」という矛盾した課題に直面しています。なかでも中小規模の宿泊施設では、運営効率と顧客満足度の両立が大きなテーマとなっています。
そこで注目されているのが、“リモート接客”という新たな選択肢。効率化だけでなく、「顔が見える安心感」や「多言語対応のしやすさ」など、従来の接客では補いきれなかった部分までをカバーできる柔軟な仕組みです。
本記事では、ホテルとリモート接客の相性の良さに着目しながら、実際の導入事例とともに、これからの“おもてなし”のかたちを考えていきます。
人手不足とサービス品質のジレンマ
ホテルや旅館などの宿泊業界では、慢性的な人手不足が深刻化しています。地方の中小規模施設では、フロント業務・予約管理・問い合わせ対応など、多くの業務を少人数でこなさざるを得ない状況が続いています。
加えて、2023年以降はインバウンド需要の回復もあり、多言語対応へのニーズも高まっています。しかし、語学対応ができる人材の確保も簡単ではなく、従業員の負担は増す一方です。
一方で、ゲストが求める接客品質の水準は、コロナ前と比べても大きくは下がっていません。むしろ、「人との距離感を選べる接客」や「非接触だけど丁寧な案内」といった、質の高い簡便さが求められるようになってきました。
「リモート接客」という新しい接客のかたち
こうした背景の中、少しずつ広がりを見せているのが「リモート接客」という仕組みです。
たとえば、フロントに立つスタッフが常駐せず、カメラ越しに接客対応を行う形。
ゲストがロビーにあるタブレットや端末を操作することで、遠隔地のスタッフにつながり、チェックイン・チェックアウトの案内や周辺情報の提供などがリアルタイムで受けられるという仕組みです。
最近では、AIや音声案内ではなく“人間のオペレーター”が対応するリモート接客が注目を集めています。単なる無人化ではなく、「人が対応している安心感」を提供できることが評価されている理由です。
ホテル業界とリモート接客は、なぜ相性がいいのか?
リモート接客は、単に省人化を図るための仕組みではありません。
ホテルという「非日常の空間」に、適度なパーソナル感と効率を両立させるためのツールでもあります。
その理由は大きく3つあります。
1.24時間体制に柔軟に対応できる
ホテル業界において、24時間365日フロント対応が基本という文化は根強くあります。とはいえ、深夜帯の来館は限られており、スタッフが常駐していても「実際の稼働は1時間に1件」というケースも珍しくありません。
このような時間帯でも、最低1人のスタッフを配置する必要があるため、コストと労務負担が非常に大きいのが現実です。しかしリモート接客であれば、1人のオペレーターが複数施設をまたいで対応することが可能です。
深夜や早朝といった時間帯も無駄なくカバーでき、なおかつ対応品質は有人接客と同等レベルを保つことができます。
2.多言語対応が容易
2023年以降、インバウンド観光の回復に伴い、英語・中国語・韓国語など多言語対応の重要性が再認識されています。ただし、現場ごとに語学スキルを持つスタッフを常駐させるのは、採用・教育・コストいずれの面でも現実的ではありません。
リモート接客なら、言語ごとの専門スタッフを1つのオペレーション拠点に集約することが可能です。つまり、英語対応が必要なタイミングでのみ英語スタッフが対応する「オンデマンド多言語接客」が成立します。
これにより、すべての拠点で均一な接客品質を保ちながら、必要なときに必要な言語を的確に提供できるようになります。
さらに、翻訳機能を活用することで、外国語が話せなくても日本語だけでスムーズな訪日外国人旅行者の接客をすることができます。
これこそ、従来の有人接客では難しかった価値提供のひとつです。
3.小規模施設でも導入しやすい
リモート接客は、都市部の大型ホテルだけでなく、10〜30室程度の地方の宿や観光旅館でも導入しやすい仕組みです。
なぜなら、少ない接客件数でも「一定時間帯のフロント無人化」によって確実に人件費を抑える効果が得られるからです。
たとえば、「夕方のチェックイン時間だけ遠隔対応」「深夜〜朝の時間帯は無人+リモート」といった部分導入”からスタートする施設も多く、導入ハードルが比較的低いのが特徴です。
また、オーナーが複数施設を所有しているケースでは、一拠点に接客人員を集約することで全体のオペレーション効率を高めることもできます。
「人を増やせない。でもサービスは落としたくない」
そんなジレンマを抱える小規模施設こそ、リモート接客の恩恵を受けやすい環境だといえるでしょう。
実際の導入事例:スタッフの負担を減らし、顧客満足度も向上
リモート接客に不安を感じる方の中には、「直接顔を合わせずに、本当に満足してもらえるのか?」「外国人の対応に支障は出ないか?」といった疑問をお持ちの方も多いかもしれません。
そうした懸念と向き合いながらTimeRepの導入を進めたホテルの担当者からは、次のような声が聞かれています。
「導入当初は、非対面で接客をすることに対して多少の不安がありました。たとえば、対面コミュニケーションなら自然に汲み取っている微妙なニュアンスが伝わりづらいことや、特に海外のお客様によく使っていたボディランゲージが使えないことなどです。」
そうした不安に対しては、声の大きさや抑揚、話す速度などをより意識して伝える工夫や、同時翻訳機能の活用によって、十分に対応できていると実感されているそうです。
実際、利用者からも「自分のペースでチェックインできて気楽だった」「画面越しにサポートしてもらえたので不便はなかった」といった前向きな声が寄せられており、非対面でも安心感のある接客が可能であることが証明されています。
導入背景や、現場での具体的な工夫については、以下の事例ページで詳しく紹介されています。
➡日本ホテル株式会社様:新事業の成功を支えるリモート接客――「問い合わせなくても分かる」シナリオで、お客様とスタッフの負担を大幅減
TimeRep導入までのステップは?
「リモート接客って、なんだか難しそう」
そう思われる方もいるかもしれませんが、実際には段階的な導入が可能です。
一般的には以下のような流れで導入が進みます。
ヒアリング・要件整理
施設規模や課題をもとに、どの業務を遠隔対応にするかを検討。
機器設置・接続テスト
タブレットやカメラなどの機器をフロントや共有スペースに設置。
対応マニュアル・シナリオ設計
リモートスタッフ向けに接客フローを整備。施設独自の言い回しなども反映。
トライアル運用
一部時間帯のみリモート化し、現場との連携をチェック。
本格運用開始
問題がなければ24時間対応や複数施設展開へ。
必要に応じて、段階的に運用範囲を広げられるため、「いきなり全てを変えるのは不安…」という施設でも、スモールスタートが可能です。
“顔が見える無人化”は、これからのホテルの新基準に
「リモート接客」と聞くと、無機質なテクノロジーをイメージする方もいるかもしれません。
しかし、実際には人のぬくもりを保ちながら、業務をスマートにするという意味で、ホテル業界にとって非常に親和性の高いソリューションです。
『宿泊体験そのものの価値は「人」で決まる』
その考えを守りながら、持続可能な運営を目指す。そんなホテルの未来の姿として、リモート接客は今後さらに広がっていく可能性を秘めています。
リモート接客導入をご検討中のご担当者様は、ぜひ一度以下リンクよりご相談ください。