
クリナップ株式会社様はシステムキッチンやシステムバス、洗面化粧台など、高品質な水回り住宅設備機器を製造・販売する企業です。
同社が全国に展開するショールームは、商品の魅力を直接体感できる重要な顧客接点です。しかし、コロナ禍以降に定着した「来場予約制」の裏側で、予約なしで来場されるお客様への対応が追いつかず、接客できずにお帰りいただく「機会損失」が大きな課題となっていました。
今回は、この課題を打破するためにリモート接客システム「TimeRep(タイムレップ)」を導入し、エリアをまたいだ画期的な「多店舗総合サポート体制」を構築された、営業本部 営業企画推進部 ショールーム推進課 係長 相子様と主任 関村様にお話を伺いました。
導入前の課題
- コロナ禍以降「予約制」が定着したものの、ご来場組数の約2割がショールームアドバイザーの対応が追いつかず、接客できないままお帰りいただく「未接客・未商談」の機会損失につながっていた。
導入の決め手
- 接客シーンに特化した完成度の高いアプリケーションである点。
- ショールームや小売店など、自社と近い業界での豊富な実績。
導入後の効果
- 「ちょこっとオンライン相談」として運用し、簡単な質問受けのみならず、見積もりの依頼を受けることが可能に。
- そのうち約3割が成約(発注)に至るという高い歩留まりを達成。
- 他店舗と助け合える体制が現場のアドバイザーの「心理的な安定」にも貢献。
活用方法:全国の拠点をつなぐ「ちょこっとオンライン相談」で、10分間のクイック接客を実現

同社では、TimeRepを活用したリモート接客を「ちょこっとオンライン相談」というサービス名で展開しています。
主な活用シーンは、予約なしでショールームに飛び込みで来場されたお客様への対応です。「少しだけ商品の特長を聞きたい」「見積もりの一部だけを変更したい」といった、短時間で解決できるニーズを持つお客様に対し、店頭に設置されたタブレット端末や二次元バーコードからワンタップで接続。遠隔地にいるアドバイザーが画面上のアバターを介して接客を行います。
最大の特徴は、エリアの壁を越えた「多店舗総合サポート体制」です。現在、来場者数が多く混雑しやすい首都圏などの「カスタマーショールーム(発信側)」に対し、遠隔から接客をサポートする「オペレーターショールーム(受信側)」に所属するアドバイザーがランダムに対応する仕組みを構築しています。接客時間を「10分程度」と明確に区切り簡単な質問や見積もり変更に特化、本格的なプランニングは次回予約を促すオペレーションを徹底することで、お客様が気軽に利用できる環境を整えています。
導入前の課題:ご予約なしのお客様を商談できずに見送る現実。データから浮き彫りになった大きな機会損失
同社が抱えていた最大のボトルネックは、予約なしで来場されるお客様の対応が追い付かず、接客できないままお帰りいただく「未商談・未接客」による機会損失でした。
「弊社では、予約なしで来場されたお客様の数を毎月集計しているのですが、この数字は年々減ることがなく、せっかくのご来場を売上に繋げられない大きな機会損失として、本社でも強い危機感を持っていました」
ショールームの現場では、目の前のお客様に100%の力で対面接客を行っている最中に、次々と新しいお客様が来場されるという状況が頻発していました。「せっかくショールームに足を運んで下さったお客様お一人おひとりにお声がけし、ご来場の目的や要望にしっかりお応えしたい。そんな想いがある一方で、アドバイザーの手が足りなくて対応できない……」。自身もショールーム勤務の経験を持つ相子様は、「現場の対応できないもどかしさ、葛藤や焦りの声は本当に共感できます。」と振り返ります。
過去には、予約なしのお客様を対応出来る時間を設けたり、受付名簿を置き、来場客管理をしたりといったショールーム独自の対策を試みたものの、エリアごとの来場者数の偏りや人員の制限もあり、全国一律で成果を出せる抜本的な解決策には至っていませんでした。
導入の決め手:豊富な事例と接客に特化したTimeRepの仕組み。遠隔サポートで店舗の稼働率を最大化する選択
数あるソリューションから同社がリモート接客システムを選択し、中でもTimeRepを選んだ理由は「接客への特化」と「リモート接客の有用性」でした。
社内で一般的に使われていたWeb会議ツールとの比較も行われましたが、それらはあくまで「会議用」であり、店舗でお客様をご案内するための導線や機能が備わっているわけではありません。その点、TimeRepはショールームや店舗での接客シーンに特化した機能がアプリケーションとしてすでに完成しており、家電業界など他業界での接客事例も豊富でした。これが「クリナップの現場にもスムーズにフィットするだろう」という大きな安心材料になったと言います。
さらに、このリモート接客システムを採用したことには、ショールーム特有の課題を解決する戦略的な狙いがありました。それが「リモート接客ならではの有用性」である、リソースの平準化です。
全国のショールームを見渡すと、エリアによって来場組数に大きな「偏り」があります。首都圏の大型ショールームが飛び込みのお客様で大混雑している一方で、地方のショールームではアドバイザーの稼働にゆとりがある時間帯も存在していました。
オンラインで画面越しに接客をするスタイルであれば、アドバイザーの「勤務地」は関係ありません。つまり、地方のショールームにいながら、リアルタイムで首都圏の混雑店舗のサポートに入ることができるのです。
地方に数多く在籍する、経験値が高いショールームアドバイザーの時間を全国規模で有効活用し、相互に助け合える体制を作れる。この「エリアをまたいだリソースの平準化」という仕組みこそが、導入の決定打となりました。
導入から定着まで:テスト運用で見えた課題。ロールプレイングやフォローで現場の不安を解消

本導入に至るまでには、一部のショールームでテスト運用を実施しました。当初は「近しいエリア同士のペア運用」や「同一店舗内での完結運用」を試みましたが、一部地域のエリア特性からデジタルツールへの心理的ハードルが高く、なかなか活用数が伸びないという壁にぶつかります。
そこで本運用では、発信側をお客様の来場が集中する首都圏エリアへシフトし、オペレーションの落とし込みを徹底しました。
最大の懸念は、受信側のアドバイザーから上がった「普段関わりのない首都圏のお客様を、画面越しに上手く対応できるだろうか。地域によって聞かれる内容やトレンドが違うのではないか」という不安の声でした。例えば、首都圏で圧倒的に多いマンションリフォームの知識や専門用語は、地方の現場では触れる機会が少なく、お客様対応自体に不安を覚えるという課題が見えてきたのです。
これに対し、ショールーム推進課主導で研修とロールプレイングを実施しました。
- 安心感を与えるマインド変革: 「100%の回答ができなくても、対面や電話と同じ。分からないことは調べて後日メールする、あるいは現地のアドバイザーに引き継げばいい。顧客との接点を絶やさないことが何より価値がある」と現場の不安要素を解消しました。
- 地域をまたぐ相互ロールプレイング: 発信側のアドバイザーがお客様役、受信側のアドバイザーがオペレーター役となり、エリア特性(マンション需要など)を体得する練習を反復。
- 社内コンテストの開催: 導入当初、期間限定で応答率や受電数を競うコンテストを行い、上位ショールームを表彰することで、電話を取るような感覚でのルーティン化につなげる後押しをしました。
また、運用の大きな助けとなるよう、展示に置くPOPを全国共通化しました。展示商品のレイアウトが全国で異なるため、価格や仕様を記載した全国共通のPOPを全ショールームに設置。お客様にそのPOPをカメラにかざしてもらうことで、遠隔のオペレーターでも「どの機種の、どの仕様か(換気扇の種類など)」が瞬時に把握でき、対面と変わらないクオリティの接客を可能にしました。
導入後の効果:見積もり依頼の「3割」が成約に!次回予約の繋ぎを超えて、リモート接客が新たな受注経路へ

最大の成果は、顧客接点の機会損失を防いだ結果、「リモート接客経由で見積もり依頼を出したお客様の約3割が成約(発注)に至る」という非常に高い歩留まりを記録したことです。
「当初は、飛び込みのお客様の機会損失を防ぎ、次回の対面予約につなげるための『繋ぎのツール』として想定していました。しかし実際に運用してみると、一度来場されたお客様が、次回以降に『ちょっと再確認したい』『仕様を少しだけ変更したい』という最終確認のツールとして利用されるケースが増えたのです。結果として、このシステムをきっかけにそのまま発注(成約)へつながるというケースも出てきました」
利用されたお客様のアンケートでも、95%以上が「大変満足(説明の分かりやすさ、質問の解決度)」と回答。通話終了後に、お客様が「聞きたいことが聞けて本当によかった」と笑顔で帰られる声を耳にし、オペレーターのモチベーションがさらに高まるという好循環も生まれています。さらに、直近ではお客様画面(UI)を改善したところ、6月のご案内数が5月比で155%に向上するなど、利用数は右肩上がりに増えています。
また、定量的な成果だけでなく、店舗全体の「心理的負担の軽減」という定性効果も際立っています。「目の前のお客様で手一杯でも、お急ぎの方にはTimeRepをご案内して他店舗に助けてもらえる」というセーフティネットができたことで、現場のショールームアドバイザーが落ち着いて目の前のお客様に向き合えるようになり、ショールーム全体の接客クオリティ向上にも寄与しています。
今後の展望:アドバイザーの“勤務地”を選ばない未来へ。全国のノウハウを柔軟に繋ぎ、グループ全体の利益を最大化する
今後は、アドバイザーが必ずしも特定のショールームにいなくても、画面を通じてどこからでも接客ができる柔軟なスタイルの確立を目指しています。
この「場所に縛られない働き方」が実現できれば、ライフステージの変化に合わせた人員配置を柔軟に検討することや、全国で均一な接客ノウハウを蓄積できるようになります。突発的な混雑や地域的な偏りによる「チャンスロス」を完全にゼロにし、離れた拠点同士が補い合うことでグループ全体の利益と顧客満足度を最大化していく構想です。
取材日:2026年7月1日
取材協力
会社名 クリナップ株式会社
URL https://cleanup.jp/
住所 東京都荒川区西日暮里6-22-22
事業内容 住宅設備機器の製造・販売(システムキッチン、システムバスルーム、人工大理石浴槽、洗面化粧台、業務用厨房、カラーステンレス建材ほか)
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